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母の暴走

neco_kenka
母の暴走が止まらない。
彼女はもう完全に、父の医療チームに不信感を持っていて、わたしが何を話して聞かせても、まったく耳を傾けないばかりか、わたしにまで不審の目を向けている。

「あんたは、(看護師さんを)プロフェッショナルなんていうけど」と、わたしが騙されていると決めつけて言う。
「あの人ら、うちらに何にも教えてくれへんやないの」
「あのなー、町医者とちゃうねんで。看護師さん、全部こちらにまかせてくださいって言うてはったやんか。わからんところは自分から聞いたらええやろ」
「あの人ら、絶対いい加減にやってるわ。カンファレンス(仕事のすり合わせ)も、してないんちゃうか」

これにはわたしも、昔そういう仕事をしていたこともあって、頭にきた。
「あんたな! プロの仕事なめてんのか! カンファレンスせえへん病院なんかないで!!」
カンファレンスをしないで帰るということは、レジをそのままにして帰るスーパーのようなもんである。
それでも母は、この子の言うことなんか・・・、という表情で、目をそらして拗ねていた。
じゃあ、彼女はどうしたいのだろう。
いまさら病院は変えられないし、変えるなんておかしいと父を説得したのは、彼女自身なのだ。

さらに母には困ったことが起きていて、わたしはいま、父のために、この人が言うことなすことの、尻拭いをしている。
看護師さんに、「よそのお宅は、もっとひどいところもありますよ」と言われたことを、どういうつもりか父に話してしまい、急いでわたしは、「それは、よそはもっとひどいところもあるけど、ここは大丈夫だから、奥さんオロオロしないでくださいっていう意味やろ?」とフォローした。
父にそんなひどい症状の人のことを言ったら、「これから俺は、そんなひどくなるのか」と、恐怖でいっぱいになるに違いないのに。
もともと想像力がなくて、思考が地面を這っている母だが、こんなときにやめてくれと思う。

また先日、あまりに「このままでは餓死する」と、父を不安がらせていたので、誤解を解こうと思って、わたしが看護師さんに、「ガンで餓死する人っているんですか?」と訊いたら、やっぱりって感じで、看護師さんは「餓死じゃないですよ」といろいろ説明してくれた。
それを聞いて、母は安心していたが、なんでそういう話を看護師さんにしないで、父にダイレクトに持っていくのか。
わたしが母に、「わからないことがあったら、文句を言うんじゃなくて、看護師さんに聞け」というのは、そこなのである。

夜になり、父が寝てしまったあとで、母が鎮痛な面もちで「苦しそうで、見るに堪えないわ・・・」と嘆くので、わたしは「見るに堪えないレベルの苦しさって、こんなもんじゃないやろ」と言った。
「じゃあ、どんななのよ」
「先生! こんなに苦しんでいるのに、なんとかしてもらえないんですか! のレベルやろ?」
そう言ったら、彼女は黙り込んでしまった。
でもわたしは、故友人が、意識はないけど、身体だけは派手に苦しんでいるのを見たから、こんな吐き気とふらつきくらいで、見るに堪えないなんて言っていたら、先がもたないだろうと思う。

とまあこんな感じで、母はいま、自分の不安を、あたり構わずまき散らしているわけなのだ。
いちばんよくないのは、病人本人にまで、不安を訴えていることだよ。
「緩和ケアって、どういうものだかわかってる?」と、母には一度訊かなきゃならないな。
オロオロして、「ああ、お父さん、苦しそう」なんて言っているだけじゃダメだと思うんだけどね。
由巳ゆみ.
Posted by由巳ゆみ.